敬語を使う機会は多いですか?

日本語は敬語表現が豊富で、日本語学習者にとってはハードルが高いと思います。ハワイ出身の力士が、親方に「タメ口」で話しかけたところ、日本人の弟子が呼び出されて「きちんと言葉を教えろ」と叱られたという話を聞いたこともあります。実地で教えると、いろいろ大変ですね。

厳しい縦社会が伝統的に存在する日本。そこに暮らす私たちが、そこそこカジュアルだと言われる欧米の言語を学ぶと違和感が生じますね。グループレッスンで、欧米流にファーストネームで呼び合おうということになると、日本人受講生同士でぎこちなさが生まれます。年齢差があっても下の名前で呼び合うからです。英語モードになると日本的な上下関係がなくなり、会話がフレンドリーになり、レッスンが終わると敬語に戻るという不自然さが笑えます。

尊敬語、謙譲語、丁寧語から成る「敬語」の日本語。かたや、フレンドリーな英語。英語に敬語は存在しないのでしょうか。英語に敬語はないと言う人がいますが、本当であり、嘘です。どういうことかというと、日本語のような複雑な敬語体系はありません。だからと言って相手を敬う表現がないわけではありません。お願いする時に使うpleaseは基礎的な丁寧語ですし、他にも丁寧な依頼の表現を習った覚えはあると思います。

  • Can you?
  • Will you?
  • Would you?
  • Could you?
  • Would you mind?

などです。これらは全てpleaseよりも丁寧なニュアンスになります。

名作映画「ローマの休日」(The Roman Holiday)をご存知ですか?その劇中でお姫様が、新聞記者に次のように尋ねます。

“Would you be so kind as to tell me… where I am?”

(教えてくださいませんこと・・・ここがどこか)

英文をタップすると御本人のセリフを見ることができます。これは依頼の表現でも一番丁寧な言い方です。いかにも高貴な人が言いそうな英語ですよ。

言葉というのは、丁寧になればなるほど長くなります。また、相手への敬意の度合いが高くなると、直接呼びかけることを避けるようになります。日本語であれば、「~様におかれましては」という表現からもわかるように、人を指さずにその人の場所を指しますね。その辺り、英語はどうでしょうか。

ロックバンド、ビートルズ(The Beatles)の「アビーロード」(Abbey Road) というアルバムの最後の曲なのですが、”Her Majesty”というのがあります。辞書でmajestyを調べると、「威厳」という意味になっていますが、ここでは違います。「彼女の威厳」ではなく、「女王陛下」という意味なんです。

国王、女王に「あなた」と話しかけたとしましょう。時代が時代なら首をはねられます。王室英語では、「所有格+majesty」を使うことになっているのです。この呼称によって距離感が生まれるわけです。”you”と呼ぶ直接性を避けるんです。女王陛下なら、Her Majesty、男性国王なら、His Majesty。そして、直接話しかける時は、”Your Majesty”と言うのです。

王子様、お姫様にはYour Highnessを使います。また、大使や首相にはYour Excellencyと呼びかけます。さらにさらに、裁判長への呼びかけは、Your Honorです。映画などで聞いたことありませんか?

「朕は国家なり」と言い放った(とされる)国王がいましたね。ルイ14世です。「朕」とは「私」の絶対敬語。これは、My Majestyとなります。

もし工藤 裕がどこかの国王や皇帝になったら、

Hi. Yutaka.  How are you?

とは言ってはいけません。

How is your majesty?

(陛下、ご機嫌うるわしきことと存じます)

と言ってください。

Mr. Kudo wants us to study English hard.

(工藤さんは私たちに英語をしっかり勉強してほしいと思っている)

とは言わずに

His Majesty wants us to study English hard.

(国王陛下は私たちがもっと熱意をもって英語を学ぶことを欲しておられる)

と言わなくてはいけません。なんだかややこしいですけど、使い方わかりましたか?以上、英語の敬語表現のお話でした。

今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!

今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!

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