分詞を形容詞的に使う?

クリーム・ブリュレ(またはクレム・ブリュレ)はお好きですか?フランス語でcrème brûléeと書くそうです。この名前の意味を聞くと「焦がしたクリーム」だとのこと。実は、文法的には「焦がされたクリーム」でして、「焦がした」は意訳です。このフランス語を英訳すると、”burned cream”です。この英訳でポイントになるのが”burned”の部分。”burn”の「過去分詞」です。過去分詞、受動態(受け身文)でおなじみの生徒泣かせの過去分詞です。泣かされた思い出、ありませんか?

分詞修飾でも意味は同じ

過去分詞、受動態(受け身文)、そして分詞修飾。分詞修飾は、中学で少し、高校で本格的に習います。生徒の理解度は実に低いんです。なぜ、クリーム・ブリュレの英語がburned creamなのか。

まず最初に、クリームは物です。人ではありません。そのクリームを焦がすのが人です。したがって、クリームは「焦がされる側」です。「される側」は受動態で表すんです。そこで登場するのが過去分詞というわけ。これがなかなか理解してもらえません。ポイントは、creamの立場で考えるということ。日本語訳で考えてはダメなんです。どういうことかというと・・・。

「焼きイモ」に見る日英言い回しの違い

「焼きイモ」という言葉の成り立ちを考えてみますね。「人が焼いたイモ」なんです。上のクリーム・ブリュレと視点が違うのがわかりますか?日本語では「焼かれイモ」とは言わないんです。「焼き鳥」とは言うけど、「焼かれ鳥」とは言いません。日本語では「人が焼いた~」の解釈なんです。クリーム・ブリュレを例に挙げましたが、こちらは「焦がされたクリーム」という、クリーム主体の発想。こんなところにも、日英の言語的発想の違いがあるんです。日本語では単語の背後に人を見るんでしょうね。

さて、「焼きイモ」を英語で表そうと思ったとき、”baking sweet potato”と間違える人は少なくありません。正しくは

baked sweet potato

です。英語の場合はイモの立場で修飾語を考えましょう。日本語では「人」を意識しますから「焼きイモ」と言いますが、英語の発想は「焼かれイモ」です。この発想があるので、クリーム・ブリュレは英語で表せばburned creamになるのです。burning creamとは言いません。

「愛」と”love”も文法が違う

もう少し関連するお話を。「愛」についてです。感極まってお相手に次のように叫ぶと過程します。

「ああ、愛する人よ!」

と。ここで質問です。「愛する人」を英語で言えますか?「人」はoneと表すことにします(不定代名詞)。答えは

(the) loved one

と表します。日本語的な感覚とズレがあるのがわかりますか?英語の発想、見えますか?「その人」の立場からすれば、あなたによって「愛されて」いますよね。だから過去分詞のlovedを使うんです。日本語的には「(私が)愛している人」という発想になるので、

(the) loving one

と英訳する人が多いんです。実はこれだと「愛情を注ぐ人」という別の意味になってしまいます。背景にある理屈は、クリーム・ブリュレや焼きイモと同じなので、少し時間をかけながら考えてみて下さい。”the loved one”の直訳は「愛されている人」ですが、翻訳の便宜上「愛する人」としているのです。

英文法無視でも英会話を楽しむことは十分可能ですが、無視したままだと会話レベルは低空飛行を続けます。全部でなくてもいいので、たまには時間を取って勉強すると、会話に幅と深みが出てきます。たまには文法にも目を向けてくださいね。

今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!

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