日本語では、選挙に打って出ることを「出馬する」と言います。出馬とは、馬に乗って出かけることが元々の意味ですが、昔は戦場に出向くことを指していました。それが後に、大将が戦場に出向くという意味、また、選挙を戦場に見立てて立候補する意味で使われるようになっています。現在では選挙の意味で使うことが多いと思いますが、地位の高い人が現場に出向いて物事に臨む意味もありますね。
選挙を馬で表すのが日本語ですが、英語ではどうかというと「帽子」です。throw [誰それ]’s hat in the ringと言います。直訳は「自分の帽子をリングに投げ入れる」なのですが、「選挙への出馬を表明する、競争に加わると発表する」という意味で使われます。出馬同様、基本的に選挙の話題で使われています。
(1) throw one’s hat in the ring (選挙への出馬を表明する、競争に加わると発表する)
この表現の由来はボクシングです。1800年代初頭に生まれた言い方だと言われています。今はないと思いますが、昔は誰でもボクサーに挑戦できたようです。当時のボクシング事情を詳しくは知りませんが、映画などで見た印象では、毎晩のように町のどこかでボクシングは行われていたようです。現在のように事前にチケットを買って予定された会場で観戦というのではなく、地元の腕っぷしの強い兄ちゃんたちが集められたボクシング小屋(?)のようなものがあったのだと思います。頻繁に足を運べる場所だったことは間違いないでしょう。
話を戻して、この時、挑戦したい人はリングに自分の帽子を投げ入れることで、その意思表示をしていました。会場がうるさいので、声を出して何か言うよりも、その方が手っ取り早いということで定着したやり方だったのだと想像できます。
ボクシングの闘いに加わるということが、後に選挙の立候補の意味で例えとして使われるようになり、現在では慣用句として一般的に使われるようになりました。選挙を闘いと捉えるのはどこも同じで、日本語では武将の戦、英語ではボクシングが由来だったということです。
(2) Joe Piten has thrown his hat into the ring once again. (ジョー・パイテンは再び選挙への出馬を表明した。)
(3) I will officially throw my hat in the ring for chief of staff. (私は正式に首席補佐官への立候補を表明いたします。chief of staffは「大統領主席補佐官」)
なお、thrown one’s towel in the ringは慣用句ですが、単に「立候補する」という動詞フレーズは、run for [何々]と言います。「候補者」はcandidateと言います。覚えておくとニュース記事が読みやすくなりそうですね。ぜひ。
(4) Mr. Drumb wants to run for President again. (ドランブ氏は再度大統領に立候補したがっている。)
(5) The Democratic Liberal Constitutional Party will put up 50 candidates in the coming general election. (民主自由立憲党は次の総選挙で候補者を50人擁立する考えだ。)
今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!