漢字の「敵」は「てき」あるいは「かたき」と読みます。国語辞典の詳細な定義はさておき、「てき」も「かたき」も日常の日本語ではほぼ同じ意味だと捉えていますよね。
「敵」と聞くと、直感的には憎しみをイメージします。自分に危害を加えようとしている相手、自分の利益の達成を邪魔している相手、戦場における交戦の相手などです。単語に対して持つイメージはそのようになりますが、実際には意味を広げて使ってもいます。ゲームや競技の競争相手、また、恋敵、商売敵のように社会的関係や人間関係における競争相手にも使っています。互いに切磋琢磨する関係を指す場合にも「敵」と言っているわけです。
以上のように、日本語では、これら複数の意味を「敵」とひと言で表しています。では英語ではどうかと言うと、日本語と同じようには行かないので注意が必要です。
1. enemy (敵)
すでに知っている人は多いと思いますが、「敵」を表す基本語はenemyです。大事なポイントは、enemyは「敵意、憎しみを持つ相手」という意味だということ。切磋琢磨の相手をenemyとは言いませんので、スポーツ、ゲーム、ビジネスの相手には使わないのです(憎しみがあるなら別ですが)。英語を習い始めて間もない人が、スポーツの対戦相手をYou are my enemy!とニコニコしながら言うのを何度か見たことがありますが、本来的には間違いです。初級の人の間違いは許してもらえるからいいのですが、中級上級になってくると、単語選択のうっかりがトラブルにつながる可能性があります。プレッシャーに感じるかも知れませんが、注意しましょう。enemyは、いわゆる「敵」です。
(1) enemy (敵)
(2) George stole Joe’s wife and they’ve been enemies ever since. (ジョージはジョーの妻を奪い、以来二人は敵対関係にある。)
2. opponent ((試合・議論の)相手、反対者)
試合やゲームの対戦相手、議論の相手のことはopponentを使いましょう。憎しみの対象ではないので、enemyと呼ぶとかなり失礼になります。opponentは「競争などで、反対の立場を取る者」という意味です。ただ、政治政党間の激しい意見対立の意味だと、敵対の意味は生まれますので、憎しみのニュアンスを込めて使われることはあります。enemyと似た意味合いで使っているかどうかは、状況や文脈によります。
(3) opponent ((試合・議論の)相手、反対者)
(4) In martial arts, you always bow to your opponent before the match begins. (武道では、試合開始前に対戦相手に一礼する。)
3. rival (ライバル、競争相手、好敵手)
すっかり日本語化した言葉です。対等な関係にある人、同じ目標を持ち、上を目指して競い合う人をrivalと言い、enemyのはずがありません。
(5) rival (ライバル、競争相手、好敵手)
(6) He finished more than three seconds ahead of his rival. (彼はライバルより3秒以上速くフィニッシュを決めた。)
4. competitor (競争者、競争相手)
動詞compete (競争する、競う) から派生した語です。スポーツやビジネスの競争相手のことです。日本語の「競合他社」に対しては、この語が使われるのが一般的です。当然ながら、憎しみの感情がある場合を除き、enemyと呼ぶのは失礼、乱暴と受け取られます。
(7) competitor (競争者、競争相手)
(8) Their prices are better than any of their competitors. (彼らが提示した価格は競合のどこよりも良い。)
「敵」を表す代表的な4つの語の意味合いを解説してきました。類語は意味が重複する場合があり、厳密にスパッと線引きして使い分けることは困難です。しかしながら、ひとつはっきり言えることは、健全な競争においては、相手をenemyと呼ぶことはしないということです。この点に注意しておけば、大きな誤解は生じないでしょう。
今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!