■rad
私の好きなミュージシャンの一人に独特な口調の人がいます。相当若く見えますが、2023年で67歳。1970年代に10代を過ごしたことになります。その方は話し方自体が特徴的なのですが、頻繁に使う特徴的な単語もありまして「ゴキゲン」「いかしてる」が代表例です。どちらも今の人たちは基本的には使いませんね。いわゆる死語の部類です(コアなファンは彼の「表現」の一部として受け入れていますが)。
いつの時代も流行っては廃れてしまう言葉があります。流行語になりやすいのは、物事の良し悪しなどの判断を表す言葉が多いでしょう。上のふたつも当てはまります。ゼロ年代を思い返すと「チョベリグ、チョベリバ」が流行り、消えました。「イケてる」はまだ使うのでしょうか。「エモい」は私がフォローしているアカウントではまだ現役のようです。昭和50年代は「ナウい」がありまして、「ナウなヤング」などとも言われていました。
他の言語でも似た傾向があると思われます。つまり、良し悪しなどを表す形容詞が新語になりやすいようなのです。今回紹介するのは
rad
です。強いて和訳するならば「すばらしい、見事な」が近いです。人や物を褒めるなど、高く評価する時に使う形容詞です。ただ、この語の登場は1970~80年代と言われていますので、語感は「ゴキゲン」「いかす・いかしてる」のようなものではないでしょうか。
radはradicalから生まれたことははっきりしていて、辞書にも記載されています。radicalは新語でも流行語でもなく、標準的な語彙です。意味は「急進(主義)的な、抜本的な、過激な」で、歴史や政治でよく使われています。おそらく、radicalに変化を求める意味合いがあることから、「新しさがすばらしい」という感覚でradが生まれたのでしょう。
radの使い方の解説はネット上にいくつか見られますが、物をradで表す場合と、人をradで表す場合には意味が違うと説明しているサイトがあります。それを間違いだとは言いませんが、英文サイトでは必ずしもそうとは言えない例文や実例が出ていますので、そんなに気にする必要はないでしょう。基本、若者言葉ですし、厳密な定義で使うものではありませんから。
褒め言葉のスラングは、他にcoolやchillなどもあり、前者はよく知られています。coolは長く使われていますが、chillは今でも言われているのかどうか。死語扱いになっているかも知れません。radはどうなるでしょうか。ノンネイティブで、しかも英語圏外に住んでいると現状を直接察知することは難しいですが、言葉自体を知っておくのは損はないと思います。
英語のスラングも覚えて使いたいか、標準的な意思疎通で十分だと考えるかは、個々の人付き合いの範囲などで決まります。ただ、映画やドラマなどを言葉の面でも楽しみたいと考えるのであれば、登場人物とそのセリフはこちらで決められませんので、ある程度はスラングや悪い言葉も聞いてわかるようにしておくとよいでしょう。
~今日のフレーズ~
rad すばらしい、見事な、いかす
■例文
(1) You say we’re awesome. No. We’re rad!
(僕らがすごいって言うけど、違う。僕たちは超すごいんだよ。)
(2) Look at these shoes. They are rad.
(この靴を見てみろよ。最高だな。)
■Today’s One Word
今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!