■cut [誰それ] some slack

この記事執筆は2022年9月ですが、週刊誌の報道により、一人の俳優が活動を停止せざるを得ない状況になっています。いつものように、ネット上にはさまざまな意見が飛び交っている様子。私は、芸能人は誰が誰だかわからないので、今は情報を追っていません。ですが、今回の役者さんはさすがに知っています。土下座シーンが印象的でしたし、昆虫にはかなり詳しいお方です。

視聴者(消費者)には、いろいろな考えがあるでしょう。業界から追放しろという意見もあれば、昭和的な芸の肥やしと捉える人もいますね。悪い奴には制裁という考え方はあって当然です。その一方で、その人の才能を惜しむ人が出て来ます。反省すべきは反省し、今後も自分の特技に磨きをかけるべく精進すべきという考え。誰もが大なり小なり間違いをしでかしますので、後者の考えもよくわかります。「許す」ことは大切なことですが、タイミングは難しいのかも知れません。

さあ、ここから英語の話になりますが、英語で「許す」と言う時は、forgiveが基本語です。同義語には、excusepardonなどがあります。また、法律の言葉で「恩赦」がありますが、これを英語ではamnestyと言います。

日常的な言葉では、「大目に見る」というのもありますね。「今回は大目に見るが、次は許さん」などと使います。英語にもこのニュアンスを持つフレーズがあります。

cut [誰それ] some slack

で、学校英語に慣れている人には、あまりなじみがないと思います。しかし今は、なじみがなくても、まずは「~のことを大目に見る」という意味のフレーズなのだと、覚えて使ってみましょう。最初は丸ごと受け入れてみるのが大事です。

Would you cut me some slack?

(大目に見ていただけませんか?)

のように使いますよ。

次に、フレーズの中身を見て行こうと思います。実はこれ、英文法の授業で習う話と結びつくので、理屈の部分がおもしろいのです。ここからは理屈の話なので、読み飛ばしても結構ですが、せっかく書くので付き合ってください^^

cutは「切る」です。slackは、通常は形容詞で「(ロープの縛りなどが)ゆるい」という意味。ただ、ここでは直前にsomeとあるので名詞だと想像できます。辞書でチェックすると、名詞として「たるみ、たるんだ部分」とあります(動詞の用法もあるのですが、ここでは割愛)。今度は単語の並びを見てみましょう。

cut (動詞) + [誰それ] (名詞) + some slack (名詞)

この語順を見て、何か気づくことはないでしょうか。英文法が得意な人なら、すぐに見抜くかも知れません。答えは、

(S) V + O + O

なのです。動詞の後ろに名詞がふたつ並ぶ場合、例の「文型」というヤツでは、SVOO (第4文型) またはSVOC (第5文型) のどちらかになります。後者のSVOC (第5文型) では、O=Cの関係が成り立つ、と習った記憶があるでしょうか。あると思います。cut [誰それ] some slackで、[誰それ]some slackは、意味的にイコールにはなりません。「人」は「たるみ」ではないからです。ですので、このフレーズは第4文型のSVOO型だとわかるわけです。

では、次。第4文型のSVOOという語順が持つ意味を知っていますか?参考書にも必ず書かれていますが、SVOOの文で使われる動詞は「授与動詞」です。その動詞は「与える」という意味を持つことになっています。この点を踏まえ、今回のフレーズを眺めてみましょう。

  • cut [誰それ] some slackは、SVOO型である。
  • SVOO型なのだから、ここの動詞は「与える」の意味である。
  • このcut「与える」という意味になる。

おお!cutを「切る」と考えないのか!目からウロコだ!というのが結論です。これに基づいて、cut [誰それ] some slackを直訳すると、

「~にたるみ・ゆるみを与える」

となります。つまり、「ガチガチ・キツキツの杓子定規のルールではなく、緩めの対応をする」となりますね。それで、日本語の表現なら「大目に見る」となるわけです。

文型上、cutが「与える」の意味になっているとは、少し驚かされるフレーズですよね。そしてなんと、このフレーズ、cutの代わりにgiveを使って言う人もいるんです。give [誰それ] some slackと。そう、「与える」の意味を持つ語順なので、意味の中心であるgiveを使う人がちゃんといるのですね。

それを最初から言えよ!と思いましたでしょ?

■例文

(1) When you’re new at a job, colleagues and bosses cut you some slack.

(新人社員の時は、同僚や上司は大目に見てくれるものである。)

(2) John’s late again, but cut him some slack. His wife just had a baby.

(ジョンはまた遅刻するが、大目に見てやってくれ。奥さんが出産したばかりなんだ。)

■Today’s One Word

今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!

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